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不動産トラブルとその判例
不動産トラブルとその判例
 
自殺事故と心理的瑕疵
中古マンションの売買契約締結後、その部屋で6年前に売り主の妻が首をくくって自殺をしていたことが判明した。買い主は、自殺は建物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景の一つであり、隠れたる瑕疵に当たるとして、契約を解除し、支払済みの手付金および違約金の支払を求める訴えを提起した。
建物は継続的に生活する場であるから、建物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景等に原因する心理的欠陥も瑕疵にあたる。ただ、解除しうる瑕疵であるというためには、単に買い主において上事由の存する建物の居住を好まないというだけでは足りず、それが一般人において、買い主の立場に置かれた場合、上事由があれば、住み心地の良さを欠き、居住の用に適さないと感ずることに合理性があると判断される程度に至ったものであることを必要とする。かくて、本件においては、首つり自殺があった建物を他の類歴のない建物と同様に買い受けるということは通常考えられないことであり、子供も含めた家族で永住するために供することははなはだ妥当性を欠くことが明らかである。本件契約は、民法570条の瑕疵担保責任による解除原因があるとして、買い主の請求を容認した。(某地裁平成元年9月7日判決)。

では、変死といった事故が心理的瑕疵に当たるか否かを認定する基準は何か。そのいわば座標軸としてどのような事情が考えられうるのか。

それらとしては、1.死亡事故の形態、2.死者と売り主との関係、3.事故の場所、4.時間の経過、5.その他の事情が考えられよう。そして瑕疵とし認定しうるか否かは、一般にこれらの事情の座標軸の組み合わせという総合的考察のうちで、決定されるものであろう。例えば、紹介した事例のように、首つりといった死に方で売り主の配偶者の事故の事例では、裁判所は6年以上の長時間経過後においても瑕疵の認定をした。これが、部外者が事故の巻き添えでたまたま目的物件の玄関先で絶命したといったケースでは、常に心理的瑕疵に該当することになるとは限るまい。そこで、このような心理的瑕疵の各認定基準(座標軸)についての問題点を簡単に摘示する。1の死亡事故の形態では、人は誰でもいつかは死亡するものである以上、病死や老衰等自然死については瑕疵の問題にはならないであろう。他殺や首つり自殺に代表される変死に限られよう。2の売り主との人間関係では、目的物件の同居の親族は問題とされようが、死者が部外者であるようなときは、他の基準との関連を考慮して決せられるべきものであろう。3の事故現場が目的物件とどのような位置関係にあるかも問題となる。建物でも附属の物置や庭先での事故はどうか。マンションの共用部分に当たる廊下、階段ではどうか。4の時の経過も、紹介した判例の6年以上についても積極に解することについては疑義をはさむ者も多い。その他の5としては、事故のあった建物を改築したうえ、いわゆるお清めをしたらどうか、人の出入りの激しい大都会と過疎地域とでは相違するのか等々も問題となろう。

   
   
セールストークと媒介業者の責任
騒音被害を伴うマンションについて新築分譲した売主業者に債務不履行(不完全履行)を認めたものの、価格の下落額に関する証明を欠くことを理由に財産的損害の賠償を退けたが、不法行為による慰謝料の支払いを認めた事例(某地裁平成3年12月26日判決 確定)
売主業者のセールスマンは、買主らに対し、少なくとも通常人が騒音を気にしない程度の防音性能を供えたマンションを提供するとのセールストークを行っていたものと認められる。
したがって、売主業者は、防音性能を有するマンションを買主らに提供すべき債務を負っていたものというべきである。
公害対策基本法第9条に基づく閣議決定「騒音に関する環境基準について」によると生活環境を保全し、人の健康を資するうえで維持されるに望ましい基準としては昼間50ホン以下、朝夕45ホン以下、夜間40ホン以下とされている。本件マンションでは、少なくとも朝夕および夜間には上基準をかなり上回る騒音が聞こえるものと認められるので左騒音は通常人の受忍限度を超えているものというべきである。以上の事実からすると、本件マンションは、通常人が騒音を気にしない程度の防音性能を備えているものとは認められない。よって、売主業者は前記債務の本旨にかなった履行をしたものとはいえない。
売主業者のセールスマンは、パンフレットに従ってその騒音性能を保証する発言をし、買主らはこれも信用し、騒音は気にならないものと思い購入したことが認められる。
したがって、売主業者は故意または過失により、買主らに対し不眠、不快感といった精神的損害を与えたものであり、その損害を賠償する責任を負う。
セールストークは、普通は見込み客への勧誘に当たって行われる説明で、見込み客にとって有利な内容であるが、説明者が内容を保証するものではなく、かつ、詐欺などの不法行為にならないものをいうようである。
しかし、本件の場合は、売主業者がパンフレットに「遮音性、気密性に優れた高性能防音サッシを使用」と明記し、かつ、セールスマンが「高性能防音サッシを使用しているから騒音は大丈夫だ」と説明しているのであるから通常のセールストークの範囲を超えた契約内容となり、業者が上記の債務を負うと認定したものである。
騒音の感じ方については、一般的に個人差があるものであるが、一般的に騒音の有無、程度は、買い主が購入意思を決定する上で、重要な要素であると言える。本件は空港の防音対策地域に属していないが、隣接していることからすると、騒音等の被害の発生が容易に予測されるものと思われるので、売主業者は、業法35条1項2号に掲げられた法令ではないにしても、当然その事実を説明する義務を負うと考えなければならない。
本件判決で、閣議決定「騒音に係わる環境基準について」を基準としていることは、目標値を債務不履行などの基準としているが、「通常人が騒音を気にしない程度の防音性能」の一つの基準になり得るであろう。
この判決は、売主業者が防音性能を有するマンションを提供すべき債務を負うとし、サッシの性能が不十分であるから債務不履行であるとしながら、価格の下落について立証がないことをもって、財産的損害の賠償請求を棄却している。売り主の債務不履行により価格が下落したことを立証することは、非常に困難だからである。完全な履行を求める趣旨で、欠落部分の修理やサッシの取り替えを請求する方法も考えられただろう。
セールストークが保証の特約かについては争われることが多いが、眺望等に関しては保証の特約を認めていないのが通例である。しかし、値上げの保証については「取引におけるいわゆるかけひきの範囲内として許容されるべきものではない」とした特例がある(某地裁昭和58年6月13日判決)。セールストークも厳しい判決が出ていることを留意する必要があろう。
   
   
賃借人の通常損耗に対する原状回復義務特約の有効性
賃貸借契約終了時に、通常の使用による損耗(通常損耗)までも借り主が修復する旨の特約が存するとして、貸し主が敷金を返還せず、さらに不足する費用の支払いを賃借人に請求したため、賃借人は通常損耗に対する修復義務はないとして、敷金の返還を求めてい提訴した事案において、一審(簡裁)、二審(地裁)はいずれも賃借人の請求を棄却したが、上告審(高裁)は逆に賃貸人の主張する特約を否認し、原判決を棄却、差戻した事例(某高裁平成12年8月22日判決 破棄・差戻・後和解)。

上告審において高等裁判所は、次のような判断を下した。
(1)一般に建物賃貸借における賃借人の原状回復義務とは、1.賃借人が付加した造作を取除く義務、2.通常の使用の限度を超える方法により賃貸物の価値を減耗させたとき(例えば、畳をナイフで切った場合)の復旧費用の負担義務等を解される。
他方、1.賃貸期間中の経年劣化、日焼け等による減価分や、2.通常使用による賃貸物の減価(例えば、冷暖房器の減価、畳のすり切れ等)は、賃貸借本来の対価というべきであって、賃借人の負担とすることはできない。

(2)もし、上記の原則を削除し通常損耗も賃借人の負担とするときには、契約条項に明確に定めて、賃借人の承諾を得て契約すべきであるが、本件賃貸借契約書第21条の「契約時の原状に復旧させ」の文言は、契約終了時の賃借人の一般的な原状回復義務を規定したものとしか読むことはできない。

(3)また、本件覚書は、本件契約書第21条を引用しているから、これを超える定めとしたとは言えず、通常損耗を賃借人が負担すると定めたものとは解されない。

(4)原判決の判断は契約の解釈を誤ったものであって、破棄を免れない。そして、賃貸人の支出した費用が通常損耗を超えるものに対するものであったかどうかについて審理する必要があるから、本件を原裁判所に差し戻す。

賃貸借契約の終了時における敷金の返還をめぐる紛争については依然として減少する傾向は見られない。本件は、「賃借人は、本契約が終了した時には、賃借人の費用をもって本物件を当初契約時の原状に復旧させ、賃貸人に明渡さなければならない」との契約条項の解釈をめぐる問題になっており、一審、二審は賃借人に通常損耗まで原状回復義務を負わせるとしたが、本判決では、通常損耗まで賃借人が費用負担することを定めたものではないと否定された。他方で、「もし、通常損耗も賃借人の負担とする時には、契約条項で明確にそのように定めて、賃借人の承諾を得て契約すべきものである」としている。判例の示す方法による特約ならば賃借人に不利な特約でも常に有効かという問題は残るが、上告審(高裁)の判決としては実務上注目すべき判決と思われる。
   
   
手付放棄による契約解除時の商法512条による報酬請求権
売り主の委託を受けた不動産媒介業者の媒介により締結された不動産売買契約が、買い主の手付金の放棄によって解除された場合に、当該不動産媒介業者は、媒介契約書における約定の報酬全額を請求することができないが商法512条により相当の報酬額を請求することができるとされた事例(某高裁那覇支部平成15年12月15日判決変更(確定))

「一般に、仲介による報酬金は、売買契約が成立し、その履行がなされ、取引の目的が達成された場合について定められているものと解するのが相当である(最高裁昭和49年11月14日第一小法廷判決)」としたうえで、控訴審は以下のように判示した。

(1)本件売買契約に際して手付金が授受されており、媒介業者は各当事者に手付放棄または手付倍返しによる解除の可能性があることを念頭に置き、媒介報酬の額についての特約もあらかじめ媒介契約に定めることは容易であった。

(2)一方、依頼者である売主としては、媒介契約に報酬額の特約が明記されるか、履行に着手する以前に、買い主が手付金を放棄して売買契約を解除したような場合には、媒介報酬の額についての合意がそのまま適用されるとは考えないのが通常と思われる。

(3)そうすると報酬の額についは、当事者間の合意が存在しないことになるが、媒介報酬の特約がない場合でも、媒介業者である不動産会社は商法512条(報酬請求権)により相当の報酬額を請求できると解される。本件において媒介業者が受け取るべき相当な報酬額については、取引額、媒介の難易、期間、労力その他諸般の事情を斟酌して定めるべきである。

(4)以上からすると本件では、手付金の額が売買代金額に対して比較的小額であることや媒介業者は契約締結の経過で格別の労をとったことがないこと、また売主は売買契約締結および履行のため格別の出損をしたことが窺えず、さらに本件土地の所有権を喪失することなく、手付金2,000万円を取得する結果となったこと、そのほか本件に現れた一切の事情を総合的に考慮すると、本件で媒介業者が売主に請求することのできる報酬額は1,000万円が相当である。

媒介報酬の請求に関する過去の判例や学説によれば、媒介により契約が有効に成立した以上、手付放棄、合意解除や債務不履行などによる契約解除が行われても、報酬請求額の成立に何ら影響を与えるものではないとしている。

 本事案も、手付放棄によって解除された場合、媒介業者は約定報酬の全額は請求できないとしながらも、商法512条により契約金額に対する手付金の額や、契約締結過程で媒介業者が通常以上の労をとったかなどを総合的に考慮し、相当額が判断されたものである。

 業法所轄課での媒介にかかる報酬については「契約時に約定報酬額の半額を、その残余金は最終代金精算日とし、手付放棄等によって契約が解除された場合には、契約時に授受された金銭をもって相当する」との考え方に立って指導が行われており、本判決は実務上参照に値するものと思われる。

 

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